「うちの子、集中力がない」。宿題を始めて3分で消しゴムをいじる。読み聞かせの途中で立ち上がる。話しかけても上の空。そんな姿が続くと、「ちゃんと座らせなかったから?」「発達障害だったらどうしよう」と、心配がふくらみますよね。
でも、子どもの集中は、やる気や性格だけで決まるものではありません。眠い日、おなかがすいた時間、難しすぎる宿題、テレビの音。大人でも集中できない条件が、子どもの前にはたくさん重なっています。
では、わが子の場合は何が重なっているのでしょう。そして、どこまでが年齢相応で、どこからが相談したほうがいいサインなのでしょう。
この記事では、集中が切れる5つの場面の見分け方と、1回分のメモのとり方を見ていきます。そのうえで、家でできる工夫と声かけ、ADHDなどを家で決めつけずに相談する目安をまとめます。
「集中力がない子」と見る前に、集中が切れた場面を一つ選び、その場面の条件を一つだけ変えてみます。
子どもの集中力がないのはなぜ?まず5つの場面を分ける
子どもの集中が続かないときは、「集中力」という一つの力のせいにせず、まず次の5つの場面のどれに近いかを見ます。
アメリカ小児科学会(AAP)は、集中が続く長さや、まわりの音や物への気の散りやすさを、子どもによってちがう「気質」の一つとしています。同時に、その日の体の調子や環境でも、子どもの様子は変わります。
| 場面 | 見るポイント | すぐ決めつけないこと |
|---|---|---|
| 1. 眠い・疲れている | 前の晩の寝た時間、朝起きたときの様子、行事や習い事のあとか | だらけている、やる気がない |
| 2. おなかがすいた・体の調子 | 食事やおやつの前か、頭やおなかの痛み、かぜのひき始めか | わがまま、甘え |
| 3. 難しすぎる・多すぎる | どの問題で止まったか、一度に見せた量、やり方が分かっているか | 勉強嫌い、根気がない |
| 4. まわりの音や物が気になる | テレビ、きょうだいの声、机の上のおもちゃ、窓の外 | 注意散漫な性格 |
| 5. 終わりや目的が見えない | 何をどこまでやれば終わりか、本人が言えるか | 好きなことしかしない |
5つは一つだけとは限りません。帰宅してすぐ、おやつの前に、テレビのついた部屋で、ドリル1ページを一度に見せる。こうした条件が重なると、集中はさらに続きにくくなります。
5つの分け方は、家で見る場所を決めやすくするためにこの記事でまとめた形です。どれに当てはまるかで、原因が決まるわけではありません。
集中できる時間は年齢と気質でちがう|何歳でどれくらい?
集中が続く時間は、年齢とともに少しずつ長くなります。ただ、同じ年齢でも子どもによって、その日によって大きくちがいます。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、5歳までに多くの子(75%以上)ができることの一つに、「読み聞かせや工作などで、5〜10分ほど注意を向ける」を挙げています。テレビや動画を見ている時間は数えません。
集中を支える力は、ハーバード大学の子ども発達センターが「実行機能」と呼ぶ力の一部です。情報を覚えておく、考えを向ける、気が散るものをよける、切り替える。こうした力は生まれつき完成しているものではなく、10代を通して大人になるころまで育ち続けるとされています。
| 年齢の目安 | 見えやすい様子 | 家での合わせ方 |
|---|---|---|
| 4〜6歳 | 好きな遊びは続くが、座って話を聞くのは短い | 読み聞かせや練習は短い区切りで。動いてよい時間を間に入れる |
| 6〜8歳(小学校低学年) | 宿題を始めるまでに時間がかかる。途中で手が止まる | 1ページを数問ずつに区切り、1区切りごとに終わりを見せる |
| 9〜12歳(小学校高学年) | 量が増えた宿題で、どこから手をつけるか迷う | やる順番と時間を、子どもと一緒に紙に書いて決める |
この表は、年齢による一般的な見え方と合わせ方をこの記事でまとめたものです。「何歳なら何分できるはず」という基準ではありません。6歳、8歳、10歳と年齢で比べるより、わが子が今いちばん続く長さを出発点にするほうが、次の一歩を決めやすくなります。
集中できない場面を見分ける|1回分を4行でメモ
集中が切れる場面を見分けるには、「集中力がない」とまとめず、1回分を4行のメモにします。
集中が切れた1回分を残す4行
- いつ・どこで:火曜の16時半、リビングの机
- 何を、どれだけ見せたか:漢字ドリル1ページ(10問)を一度に
- どこで、どうやって止まったか:3問目で消しゴムをいじり、窓の外を見た
- その前の様子:帰宅してすぐ、おやつ前、テレビがついていた
4行にしたのは、書く手間を減らすための形で、決まった検査ではありません。1回書いたら、うまくいった日も同じ4行で書くと、ちがいが見えてきます。
「集中しなかった」を、見えた動きに書き直す
「ぼーっとしていた」「ふざけていた」だけでは、あとで比べられません。目に見えた動きに直します。
- 「やる気がない」→「鉛筆を持ったまま、2分ほど手が止まった」
- 「話を聞いていない」→「名前を呼ぶと、2回目でこちらを見た」
- 「すぐ遊ぶ」→「5問目のあと、机の上のミニカーを走らせた」
細かく測る必要はありません。家族が見て、同じ場面だと分かる程度で十分です。
メモから選ぶ、最初の一つ
メモがたまったら、いちばん多い場面から一つだけ変えます。迷う場面は、「もし〜なら、まず〜」と決めておくと、その日に考えることが減ります。
- もし眠そうな日に止まるなら、まず宿題を夕方の早い時間に移し、寝る時間を見直す
- もしおやつの前に止まるなら、まず軽いおやつと水を先にする
- もし同じ問題で止まるなら、まず最初の1問を一緒に解く
- もし音や物に目が向くなら、まずテレビを消し、机の上を今使う物だけにする
- もし始める前から嫌がるなら、まず「どこまでで終わりか」を紙に書いて見せる
一つ変えて、止まる場所が変わったかどうかを、同じ4行で比べます。変わらなかった日も、「この条件ではなかった」と分かる手がかりになります。
家でできる集中の工夫|短く区切る・机を片づける・終わりを見せる
家でできる工夫は、「短く区切る」「机の上を片づける」「終わりを見せる」の3つから一つ選びます。
AAPは、気が散りやすい子への関わりとして、短く簡単な指示を出すこと、名前を呼んで目を合わせること、怒ったり恥ずかしい思いをさせたりせずに戻すことを勧めています。休けいと声かけを入れ、やり終えたことを褒めることも挙げています。ここではそれを、家で使いやすい3つにまとめました。
短く区切る
1ページを一度に見せず、数問ずつに区切ります。付せんで残りを隠す、1区切りごとに丸をつける、などです。区切りの長さは、メモで分かった「止まるまでの長さ」より少し短くします。
机の上を片づける
机の上には、今使う物だけを置きます。おもちゃや本は見えない場所へ。テレビは、宿題の時間だけ消します。全部の部屋を片づけなくても、子どもの目に入る範囲だけで十分です。
終わりを見せる
「何をどこまでやれば終わりか」が見えると、始めやすくなります。
- 区切りの数だけ丸を書き、終わったら塗る
- 「この5問が終わったら、おやつ」と次の楽しみを伝える
- タイマーで、残りの時間を目で見えるようにする
時間を目で見せる道具の選び方は、切り替えにタイマーは効くかを比べた記事で扱っています。
迷ったら、まず短く区切ります。道具がいらず、今日からできるからです。もし区切っても1区切り目で止まるなら、量ではなく難しさの問題かもしれません。次は、最初の1問を一緒に解いてみます。
集中しない子への声かけ|つい言う言葉の言い換え
集中しない子に届きやすいのは、「次にする一つ」を短く伝える言葉です。
「集中しなさい」は、子どもにとって何をすればいいのか分かりにくい言葉です。よく出る言葉を、言い換えの例と並べました。
| つい言う言葉 | 伝わりにくい理由 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 「集中しなさい」 | 何をすればいいかが分からない | 「この1問だけ、今やろう」 |
| 「何回言ったら分かるの」 | 責められた気持ちだけが残る | (名前を呼んで目を合わせてから)「鉛筆を持とう」 |
| 「早く終わらせて」 | どこまでが終わりかが見えない | 「この5問が終わったら、おやつだよ」 |
| 「なんでできないの」 | 答えられない質問になる | 「どこで止まった? ここ?」 |
| 「ちゃんと座って」 | 「ちゃんと」の中身があいまい | 「足を床につけて、あと3問」 |
区切りが一つ終わったら、「5問終わったね」と、やり終えたことを短く言葉にして返します。長い励ましより、次の区切りに進むきっかけになりやすい一言です。
「できない」と言って止まってしまう子には、「できない」とすぐ諦める子どもへの声かけも役に立ちます。
宿題に集中できない夕方|水野家の場合
火曜の夕方、8歳のひよりは帰ってすぐ、リビングの机で漢字ドリルを開きました。けいすけが1ページ10問を見せて「全部やったら遊んでいいよ」と言うと、ひよりは3問目で消しゴムをいじり始め、窓の外を見ました。リビングではテレビがつき、弟のそうたが積み木で遊んでいました。
次の日、まどかは付せんでドリルを5問ずつに隠しました。テレビやおやつの時間は、前の日と同じにしました。ひよりは最初の5問を終え、自分で付せんをはがしました。2つ目の区切りの途中でまた手が止まり、その日は休けいをはさんで続けました。
この場面で変わったのは、ひよりの集中力ではありません。両親が「集中力がない」という見方をやめ、止まる前の条件を分けて、一つだけ変えたことです。2つ目で止まったことも、次に試すこと(テレビを消すか、おやつを先にするか)を決める手がかりになりました。
今夜、集中が切れた場面を一つだけ、4行でメモしてみてください。
集中力がないのは発達障害?ADHDかどうかは行動だけで決められない
集中力がないように見えても、行動だけでADHD(注意欠如・多動症)などの発達障害かどうかは決められません。
CDCは、子どもが集中したり、落ち着いてふるまったりするのが難しい時期があるのはふつうのことだとしています。そのうえで、ADHDの子どもでは、こうした様子が成長とともに自然に消えるわけではなく、長く続き、強く、学校・家・友だち関係で困りごとを起こすと説明しています。
さらにCDCは、ADHDを一つの検査で決めることはできないとしています。眠りの問題、不安、気分の落ちこみ、学習障害なども、ADHDと似た様子を見せることがあるからです。診断の過程では、聞こえや見え方の検査を含む体の診察や、家・学校など複数の場面での様子を、保護者や先生に聞くことが勧められています。
日本の発達障害情報・支援センターも、発達障害の種類を分けて診断するのは大変難しく、年齢や環境で目立つ様子が変わると説明しています。そして大事なのは、その子が何ができて、何が苦手なのかに目を向けることだとしています。
だから、家での役目は診断名を当てることではありません。
- 集中が切れる場面と、うまくいく場面のちがい
- 家だけか、園・学校でも同じか
- 生活(宿題・友だち・朝の支度など)にどれくらい困りごとが出ているか
この3つを書きとめておくと、相談先で話が早く進みます。じっとしていられない、待てないなど、体の動きが目立つときは、落ち着きがない・衝動的な子どもへの対応も合わせて読んでください。
集中力がないのは病気?睡眠と体の調子を先に見る
集中が続かない日が続くときは、発達の心配の前に、睡眠と体の調子を見直します。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、睡眠不足が日中の眠気や疲れだけでなく、注意力や判断力の低下にも関係すると書いています。こどもの睡眠時間の目安は、3〜5歳で10〜13時間、小学生で9〜12時間です。同じガイドは、朝は太陽の光を浴び、朝食をしっかりとり、夜ふかしの習慣を避けることも勧めています。
次のような様子があれば、集中の工夫より先に、かかりつけの小児科で相談します。
- 夜は寝ているはずなのに、昼間ひどく眠そう、朝なかなか起きられない
- 呼んでも気づかないことが多い、テレビの音を大きくしたがる
- 黒板や本を見るとき、目を細める・顔を近づける
- 頭やおなかの痛み、だるさが続く
睡眠の整え方は、子どもの睡眠と生活リズムの整え方でくわしく扱っています。
子どもの集中力のことで相談したほうがいい目安
相談するかどうかは、「集中できる時間が何分か」より、子どもが困っているか、生活にどれくらい響いているかで決めます。
子どもの集中力のことで相談したほうがいい目安
早めに相談
- 集中の難しさが長く続き、学校・家・友だち関係のどこかで、本人が困っている
- 家だけでなく、園や学校でも同じように話を聞けない、作業を終えられないと言われる
- ひどい昼間の眠気、聞こえや見え方の気がかり、続く痛みなど、体の様子が気になる
- 勉強の遅れや「どうせできない」という言葉が増え、自信をなくしている
- けがにつながる飛び出しや、待てないことでのトラブルが続いている
記録しながら相談を検討
- どの場面(時間帯・課題・場所)で集中が切れ、どの場面なら続くか
- 区切る・片づける・終わりを見せるのどれかを変えた日に、止まり方がどう変わるか
- 睡眠時間と、朝の起きやすさ
相談先は、かかりつけの小児科、市区町村の子育て・発達の相談窓口、発達障害者支援センター、園の先生、学校の担任やスクールカウンセラーです。診断名が決まっていなくても、困っている場面のメモだけで相談できます。
相談先の選び方に迷ったら、子育ての悩みはどこに相談するかで、急ぐ度合いと目的から入口を選べます。
子どもの集中力がないときによくある質問
ゲームや好きなことには集中できるのに、勉強だと集中できません。
集中が続く長さは、何をしているかで大きく変わります。好きなことは終わりや楽しみが見えやすく、勉強は見えにくいことがあります。勉強では、短く区切る・終わりを見せる工夫から試してください。好きなことに集中できるかどうかだけで、ADHDかどうかを決めることはできません。
集中力がないのは、何歳まで様子を見ていいですか?
年齢で区切るより、困りごとが続いているかで考えます。集中の力は大人になるころまで育ち続けますが、学校・家・友だち関係で本人が困る状態が長く続くなら、年齢に関係なく相談してかまいません。様子を見る間も、場面のメモを残しておくと相談で役立ちます。
集中力がないのは、親の育て方のせいですか?
親のせいと一つに決めることはできません。集中の続きやすさには、生まれ持った気質や、その日の睡眠・体調、課題の難しさ、まわりの環境が重なっています。一方で、関わりや経験は集中を支える力を育てる手助けになります。責める相手を探すより、条件を一つ変えて比べます。
栄養やサプリで集中力は上がりますか?
集中力を上げる食べ物やサプリを探す前に、まず睡眠時間と朝ごはんを見直します。厚生労働省の睡眠ガイドも、こどもには朝食をしっかりとり、夜ふかしを避けることを勧めています。サプリを考えるときは、かかりつけ医に相談してください。
参考資料・出典
Centers for Disease Control and Prevention:Symptoms of ADHD
公開・改訂: 2026年6月1日更新確認日: 2026年10月15日子どもが集中やふるまいに困る時期があるのはふつうだが、ADHDでは症状が続き、強く、学校・家・友だち関係で困りごとを起こすという説明Centers for Disease Control and Prevention:Diagnosing ADHD
公開・改訂: 2026年7月7日更新確認日: 2026年10月15日一つの検査で診断できないこと、睡眠の問題・不安・うつ・学習障害も似た様子を示すこと、聞こえ・見え方の検査を含む診察、家庭や学校など複数の場面の情報を聞くことCenters for Disease Control and Prevention:Important Milestones: Your Child By Five Years
公開・改訂: 2026年5月16日更新確認日: 2026年10月15日多くの子(75%以上)が5歳までにできることとして「読み聞かせや工作などで5〜10分注意を向ける(画面の時間は数えない)」。標準化された発達検査の代わりではないAmerican Academy of Pediatrics / HealthyChildren.org:Understanding Your Child's Temperament: Why It's Important
公開・改訂: 2024年1月23日最終更新確認日: 2026年10月15日注意の続く長さと気の散りやすさを気質の特徴とし、短く簡単な指示、名前を呼び目を合わせる、怒らず恥をかかせずに戻す、休けいと声かけ、やり終えたことを褒めるといった親への助言Center on the Developing Child, Harvard University:InBrief: Executive Function
公開・改訂: 2012年5月20日確認日: 2026年10月15日情報を保つ・考えを向ける・気が散るものをよける・切り替える力(実行機能)は生まれつき備わっておらず、10代を通して大人になるころまで育ち続けるという説明厚生労働省:健康づくりのための睡眠ガイド2023
公開・改訂: 2024年2月確認日: 2026年10月15日睡眠不足と注意力・判断力の低下の関係、こども版の推奨(小学生9〜12時間、3〜5歳10〜13時間の目安、朝の光・朝食・夜ふかしを避ける)国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター:発達障害とは
確認日: 2026年10月15日発達障害の種類を分けて診断するのは大変難しく、年齢や環境で目立つ症状が変わること、その人ができること・苦手なことに目を向ける大切さ国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター:発達障害者支援センター・一覧
確認日: 2026年10月15日全国の発達障害者支援センターの所在地・連絡先。事業内容は地域で異なり、まず地域を担当するセンターに問い合わせるよう案内