子どもが水を少しこぼして「ごめんなさい」。親がため息をついただけでも「ごめんね」。謝らなくていいと伝えても、また謝ると、どう返せばいいのか迷います。
子どもが謝りすぎるときは、言葉をやめさせる前に、直前に何が起き、何を心配しているのかを確かめます。 そのうえで、親が分かっている事実を短く伝え、片づける、話を聞くなど次にすることを一緒に選びましょう。
謝る回数だけでは、理由も、病気かどうかも分かりません。ここでは3〜12歳の子との会話を想定し、場面ごとの返し方を考えます。本人が苦しい、学校や睡眠などに影響しているときは、声かけだけで解決しようとせず相談につなぎます。
「ごめんなさい」の直前と直後に、何があったか
「また謝っている」と気になったら、言葉の回数から、その前後の出来事へ目を移してみます。誰が何をしたあとに謝ったのか。子どもは何を気にしていたのか。親が分かることと、まだ分からないことを分けてみてください。
たとえば、机の水をこぼしたなら、起きたことは目で確かめられます。一方、友達の返事が短かっただけなら、相手が怒っているかどうかは分かりません。どちらにも「あなたは絶対に悪くない」と返すと、確かめていないことまで約束してしまいます。
- 直前:物を落とした、誰かが黙った、親の声が大きくなった、など
- 本人の言葉:「怒ってる?」「わたしのせい?」など、実際に口にしたこと
- 直後:片づけに移れた、謝り続けて遊びに戻れなかった、など
この三つは、原因を診断する検査ではなく、会話と相談のためのメモです。「不安だから」「性格だから」と先にまとめず、見聞きしたことを残します。
聞くなら、質問を重ねず一つから
「何が気になった?」と聞いてみます。幼い子や言葉が出にくい子には、「さっきの大きい声、びっくりした?」のように、目の前で起きたことを一つ挙げる方法もあります。子どもが「違う」と言ったら、その答えを受け取ります。
「分からない」「今は話したくない」も答えです。理由が出るまで問い続けたり、親が考えた説明にうなずかせたりする必要はありません。
起きたことに合わせて、返す言葉を変える
次の表は、家庭で使うために編集部が作った会話例です。謝罪を減らす効果が確かめられた手順ではありません。子どもの言葉や、その場で分かっていることに合わせて変えてください。
| 場面 | 返す言葉の例 | 次にすること |
|---|---|---|
| 子どもが水をこぼし、何度も謝る | 「こぼれたね。ごめんねは聞いたよ。タオルを持ってこよう」 | 一緒に拭く。失敗した子自身を責める話に広げない |
| 親が疲れて息をつくと、子どもが謝る | 「今日は歩いて足が疲れたんだ。今のため息は、あなたに怒って出たものではないよ」 | 親が休む。自分の気分を子どもに直してもらおうとしない |
| 友達の返事が短く、悪いことをしたかもと謝りたがる | 「何か嫌だったのかなって気になるんだね。返事が短かった理由は、まだ分からないね」 | 本人が話せる範囲で、やりとりを確認する。困りごとが続くなら先生にも相談する |
水をこぼした例では、謝ったことを受け取り、片づけへ移っています。誰かがけがをした、物が壊れた場合まで「気にしなくていい」で済ませる例ではありません。まず手当てや安全の確保をし、必要な対応を大人が引き受けます。
友達の気持ちは、親にも分からないことがあります。「絶対に怒っていない」「謝れば全部元に戻る」と保証するより、分からない部分を残したまま、誰に何を確認できるか考えます。繰り返し責められる、謝罪を強いられる、怖くて断れないなどの話が出たら、本人だけで相手に確認させず、園や学校と状況を確かめてください。
水野家では、父のため息をどう説明したか
夕食後、けいすけが椅子に腰を下ろして、ふうっと息をつきました。ひよりが本から顔を上げ、「ごめんね」と言います。
けいすけは「何をしたの?」と聞きかけます。でも、ひよりが何かしたとは、まだ分かりません。先に、自分がため息をついた理由を伝えることにしました。
けいすけは休み、ひよりは本の続きを開きました。これで心配がすべて消えたかどうかは分かりません。それでも、ひよりが何に反応したのかが一つ分かり、けいすけは自分の疲れを自分の言葉で説明できました。
これは架空の会話例です。いつも穏やかに返せる家族を目指す話でも、同じ言葉で必ず落ち着くという話でもありません。もし親が実際に強い声を出したなら、「怒っていない」と打ち消すより、その言い方を認めて謝る必要があります。その場面は、叱りすぎた後に親が謝るときの記事で扱います。
「怒ってない?」が繰り返されるとき
一度答えても、もう一度確かめたくなることがあります。そのたびに長い説明を足さなければならないわけではありません。答えるのを急にやめる前に、何を確かめたいのかを見ます。
前の答えが曖昧だったのかもしれませんし、新しい出来事があったのかもしれません。同じ場面についての確認なら、「さっきの水のことは、もう片づいたよ。今は絵本を読もう」のように、分かる事実と今することを短く返す例が考えられます。途中で新しい心配を話したら、前と同じ質問だと片づけずに聞きます。
本人もやめたくてもやめられず苦しそうなときや、確認のために眠れない、支度が進まないときは、家庭だけで確認を減らす練習を続けず相談してください。 不安への支援全体は、子どもの不安が強いときの対応で整理しています。
「ごめんなさい」を禁止したり、全部「ありがとう」に変えたりしない
助けてもらった場面で「ありがとう」を使うことはできます。ただ、謝る言葉が出るたびに言い直させると、子どもが何を心配していたのかを聞かないまま、言葉だけを直すやりとりになります。
実際に相手を困らせたときの謝罪と、理由が分からないまま自分を責めている場面を、同じように扱う必要はありません。反対に、謝る言葉が出ないときの関わり方は、子どもが謝らない理由と対応に分けています。
回数よりも、本人のつらさと生活への影響を相談する
NHSの保護者向け案内では、子どもの心配を決めつけたり否定したりせず話を聞くこと、強い不安が続き日常生活を妨げる場合に支援を求めることを勧めています。これは不安一般の案内で、謝りすぎる子を診断する基準ではありません。
たとえば、謝ることやその後の確認に時間を取られて、学校へ行けない、眠れない、好きな遊びにも戻れない。怖がる様子が強まっている。そうした変化があるなら、「何回以上なら相談」と数を決めて待つ必要はありません。
CDCも、似た様子が別の状態によって起こることがあり、適切な評価が必要だと説明しています。気になる様子だけから家庭で病名を決めるのではなく、相談先と状況を確かめていきます。
相談するときは、次のように具体的な場面を伝えると、家庭の外の様子とも照らし合わせられます。
- いつ、どこで:「寝る前、翌日の学校の話をしたとき」
- 本人の言葉:「何もしていないけれど、先生に謝った方がいい?」
- 生活で困っていること:「同じ確認が続いて、寝つけない」
- 家庭で返した言葉と、その後の様子:「今分かることを伝えたが、苦しそうだった」
記録をそろえてから相談しなければならないわけではありません。担任や養護教諭、小児科、地域の保健センターなど、つながりやすい相手から相談できます。公的な窓口は厚生労働省の案内でも確認できます。脅しや暴力が疑われる場合は、安全を確保することを先にし、子どもだけで解決させないでください。
次に「ごめんね」が出たときは、うまい言い方を探す前に、親が確かに分かっていることを一つ伝えてみます。「水は一緒に拭こう」「今日は私の足が疲れたんだ」。分からないことは、そのまま残してかまいません。
子どもが謝りすぎるときのよくある質問
すぐ謝るのは、親が叱りすぎたせいですか?
謝る回数だけで、親の叱り方が原因とは決められません。直前に何が起き、本人が何を気にしていたかを確かめます。実際に親が強い言い方をしたなら、その言い方を認めて謝り、必要な対応を考えます。
悪くないのに謝るときは、謝らないように教えますか?
一律に謝罪を禁止するより、何が起きたかと本人の心配を分けます。親の疲れのように理由が分かることは説明し、友達の気持ちなど分からないことは断定しません。謝罪の言葉だけを言い直させないようにします。
一日に何回謝ったら相談した方がよいですか?
この記事では回数による基準を設けません。本人の苦しさ、眠る・登校する・遊ぶといった生活への影響、様子の変化を相談します。記録が完成するまで待たず、学校や小児科、地域の相談窓口へつなげてください。
参考資料・出典
CDC:Anxiety and Depression in Children
似た症状に別の背景があり得ることと、医療者による慎重な評価の必要性。謝罪の頻度による診断基準ではありません。2026年10月29日確認。- 心配を決めつけず聞くこと、日常生活への影響と相談の目安。不安一般の案内で、本文の返答例の効果を検証した資料ではありません。2026年10月29日確認。
厚生労働省:困ったときの相談先
公的相談窓口と家庭・学校の連携の案内。2026年10月29日確認。