「ほら、あいさつは?」と言っても、子どもは親の後ろに隠れたまま。相手に「すみません、人見知りで」と謝りながら、帰り道で「このままで大丈夫かな」と考えてしまう。子どもの人見知りや恥ずかしがりは、親にとっても気をつかう悩みです。
まず知っておいてほしいのは、人見知りは育て方のせいとは限らないということです。アメリカ小児科学会の資料は、恥ずかしがりな子の多くは生まれつきそうだと説明しています。では、生まれつきなら、親にできることはないのでしょうか。
そんなことはありません。この記事では、人見知りが何歳から・いつまで続くのかを確かめ、あいさつを無理にさせない代わりの方法と、少しずつ慣れる手順を紹介します。最後に、家では話せるのに園や学校で話せないときに考えたい「場面緘黙」と、相談の目安を見ていきます。
人見知りは直す欠点ではなく、慣れるまでに時間がかかる気質です。急がせず、小さな一歩を重ねるほうが、親子ともに楽になります。
子どもの人見知りは、気質の一つ|育て方のせいとは限らない
子どもの人見知りや恥ずかしがりは、多くが生まれつきの気質の一つです。アメリカ小児科学会は、つらい経験から恥ずかしがりになる子もいるものの、多くは生まれつきそうだと書いています。
気質とは、その子が生まれつき持っている、物事への反応のしかたのくせのようなものです。アメリカ小児科学会の資料は、気質の一つとして「慣れるまでに時間がかかる、慎重で恥ずかしがりな子」を挙げ、次のように説明しています。
- 知らない場所や人に、ゆっくり慣れていく
- 新しい友だちをつくるとき、ためらったり恥ずかしがったりする
- 初めて会う人や場面では、まず一歩引く
- 慣れてくると、新しい人や場面を受け入れやすくなる
最後の一行が大切です。
慣れるのに時間がかかるだけで、慣れないわけではありません。
生まれつきの違いを示した研究
1988年に発表された、アメリカの研究があります。知らない人や物の前でとても慎重だった2歳児と、とても活発だった2歳児を、7歳まで追ったものです。慎重だった子の多くは、7歳でも、知らない子どもや大人の前で口数が少なく、近づくのを避けがちでした。研究者は、生まれつきの体の反応の違いが関わっている可能性を示しています。
ただし、この研究は、とくに差のはっきりした子だけを選んで調べたものです。すべての人見知りの子に当てはまるわけではなく、慎重な子がみな同じ道をたどるわけでもありません。先に見たアメリカ小児科学会の気質の資料も、気質は経験や人との関わりによって少しずつ変わると書いています。
子どもの人見知りは何歳から何歳まで?赤ちゃんと幼児・小学生で違う
赤ちゃんの人見知りと、幼児・小学生の人見知りは、少し意味が違います。
厚生労働省の保育所保育指針の2008年版は、おおむね6か月から1歳3か月ごろの赤ちゃんについて書いています。身近な大人とのやりとりが盛んになる一方で、人見知りをするようになる、という説明です。特定の大人とのつながりが深まるのと同じころに見られる姿です。
3歳以降も知らない人の前で固まる、隠れるという姿が続くときは、赤ちゃんのころの人見知りとは別に、その子の気質としての恥ずかしがりが見えていると考えられます。
| 時期 | 見えやすい姿 | 見方 |
|---|---|---|
| おおむね6か月〜1歳3か月 | 知らない人を見て泣く、親にしがみつく | 保育所保育指針(2008年版)にある、この時期によく見られる姿 |
| 幼児(3〜6歳) | 親の後ろに隠れる、あいさつで固まる、園では小さな声 | 慣れるのに時間がかかる気質が見えやすくなる |
| 小学生(6〜10歳) | 発表が苦手、初めての友だちに自分から話しかけない | 慣れた相手とは話せるなら、ゆっくり関わる子と見てよいことが多い |
では、いつまで続くのでしょうか。アメリカ小児科学会は、恥ずかしがりな子の多く、おそらくは大半が、成長とともにうまく付き合えるようになると書いています。内側では恥ずかしさを感じていても、外からはそう見えない形で人と関われるようになる、という説明です。
一方で、大きくなっても人の注目を浴びるのは苦手なまま、という子もいます。それは悪いことではありません。人見知りを「なくす」よりその子なりの関わり方を見つけるほうを目標にすると、親も子も楽になります。
人見知りの子に「あいさつは?」と迫らない|代わりの3つの方法
人見知りの子に、その場であいさつを迫るのは、あまりおすすめできません。言わなければと思うほど、体が固まる子もいるからです。
話すことそのものが難しくなる「場面緘黙」について、文部科学省の手引に、こんな説明があります。周りが何とか話させようと働きかけ続けると、かえって緊張と萎縮を強めることがある、というものです。これは場面緘黙についての説明ですが、人見知りの子にあいさつを迫る場面にも、学べることがあります。
あいさつの代わりに使える方法を、三つ挙げます。
- 声の代わりの合図を決めておく:手をふる、会釈する、にっこりするなど、声を出さなくてもできる形を、家で本人と決めておきます。
- 親が先にあいさつしてみせる:アメリカ小児科学会は、子どもはまわりの大人を見て学ぶので、親が人と気持ちよく関わる姿を見せることを勧めています。子どもは親の後ろにいても、それを見ています。
- 帰り際の「バイバイ」だけをねらう:会ってすぐより、少し慣れた帰り際のほうが、合図を出しやすい子もいます。
迷ったら、まず1の「声の代わりの合図」だけを決めてください。
- もし合図も出なかったら、親が「また今度ね」と代わりに言って、その場は終わりにします。
- もし相手に気をつかうなら、「慣れるまで少し時間がかかるんです」と、責めない言い方で伝えます。
- もし本人が「自分で言いたい」と言うなら、家で一度だけ練習して、うまくいかなくても次に回します。
人見知りの子が少しずつ慣れる手順|小さな一歩を5段階で
人見知りの子が人に慣れていくには、小さな一歩を重ねることが助けになります。アメリカ小児科学会は、近所の人に「こんにちは」と言う、数分だけ遊びに加わるなど、小さな一歩をすすめ、前もって家で練習してみることも勧めています。
次の5段階は、この記事で考えた目安です。研究で決まった段階ではないので、子どもに合わせて飛ばしたり、戻ったりしてかまいません。
| 段階 | 子どもがすること | 親がすること |
|---|---|---|
| 1. 見る | 親のそばから、相手や場面を見ている | 無理に前へ出さず、そばにいる |
| 2. 同じ場にいる | 相手のいる部屋に、親と一緒にいられる | 親が相手と話し、楽しそうな姿を見せる |
| 3. 合図を出す | 手をふる、うなずく、指さす | 合図が出たら、驚かずにふつうに受け取る |
| 4. 一言だけ | 「バイバイ」「うん」など、短い一言 | 一言で十分と考え、続けて話させない |
| 5. 短いやりとり | 好きなものの話など、短い会話 | 話題は本人の好きなことから選ぶ |
一歩進めたら、すぐ短く認めます。アメリカ小児科学会は、小さな一歩でも子どもにとっては大変なことなので、たくさん認めてあげるよう書いています。「手をふれたね」の一言で十分です。
次に知り合いに会ったら、声でなくても、手をふれたかどうかだけを見てください。できなくても、それは失敗ではなく、まだ1段目か2段目にいるというだけのことです。
初めての教室や行事に入れないときは、新しい場所を怖がる子どもへの手順が役に立ちます。
人見知りの子に、つい言ってしまう言葉と言い換え
人見知りの子を前にすると、つい言ってしまう言葉があります。悪気はなくても、子どもには別の意味で届くことがあります。
| つい言ってしまう言葉 | 子どもにはどう届きやすいか | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| 「恥ずかしがらないの」 | 感じていることを否定されたように聞こえる | 「ちょっとドキドキするね。手をふるだけでいいよ」 |
| 「ちゃんとあいさつしなさい」 | できない自分を、人前で責められているように感じる | 「ママが先に言うね。できたら手をふってね」 |
| 本人の前で「この子、人見知りで」 | 自分はそういう子なんだ、と思いこむきっかけになりうる | 「慣れるまで少し時間がかかるんです」 |
| 「〇〇ちゃんは言えるのに」 | 比べられて、もっと体が固まる | 「この前は手をふれたね」 |
| 「家ではしゃべれるでしょ」 | 話せない場面があること自体を責められる | 「家では話せるね。外ではゆっくりでいいよ」 |
言い換えが毎回できなくても大丈夫です。言ってしまった後に「さっきは急がせちゃったね」と伝えれば、次の場面でやり直せます。
人見知りのひよりが、エレベーターで手をふれた朝
朝のエレベーターで、同じ階の人に「おはよう」と声をかけられました。8歳のひよりは、まどかの後ろにさっと隠れました。
その夜、まどかはひよりに、朝のことを一つだけ聞きました。
次の朝、エレベーターで同じ人に会ったとき、まどかが先にあいさつをすると、ひよりはまどかの横から小さく手をふりました。けいすけは家に帰ってから「手をふれたね」とだけ言いました。
この場面で変わったのは、ひよりではなく、大人の決めていた「あいさつの形」です。声でのあいさつを一つの正解にしていたのは、大人のほうでした。あいさつを手をふる合図に変えたら、ひよりは自分から関われたのです。声を出すかどうかは、これからもひよりが決めます。
人見知りと場面緘黙の違い|家では話すのに園・学校で話せないとき
人見知りの子の多くは、慣れてくると小さな声でも話せるようになります。一方、家ではふつうに話すのに、園や学校など特定の場面では長いあいだ話せない状態が続くときは、「場面緘黙」の可能性も考えます。
場面緘黙は「話さない」のではなく「話せない」
文部科学省の手引は、場面緘黙(選択性かん黙)を次のように説明しています。
- 話す力はあるのに、家族や慣れた人以外の前や、家の外など特定の場面で、話すことが一貫してできない
- 園に入るころや、小学校に入るころなどに始まる例が多い
- 「選択性」という言葉から、自分で話さないことを選んでいると誤解されやすいが、そうではない
- 適切な関わりで、よくなるものでもある
イギリスの国民保健サービス(NHS)も、場面緘黙の子は話すことを拒んでいるのではなく、話せない状態だと説明しています。専門家が診断するときの目安としては、話せない状態が少なくとも1か月(新しい場面では2か月)続き、園や学校での生活に響いていることなどを挙げています。トイレに行きたいと言えずにがまんしてしまう、という困りごとが出ることもあります。
「ただの恥ずかしがり」で片づけず、気になれば相談する
同じNHSの資料は、「そのうち治る」「ただの恥ずかしがり」という意見をうのみにせず、気になるときは相談するよう書いています。人見知りか場面緘黙かを、家庭で決める必要はありません。気になる様子が続いているなら、それだけで相談する理由になります。
泣いて話せない場面での関わり方は、泣いて話せない子どもへの対応も参考になります。
人見知りが激しいときの相談の目安|発達障害との違いは家で決めない
人見知りが激しいからといって、発達障害とは限りません。文部科学省の手引も、場面緘黙と自閉症は見分けがつきにくいことがあり、いろいろな面からの調べが必要だと書いています。家庭で見分けようとせず、困りごとが続いているかどうかで相談を決めます。
アメリカ小児科学会は、次のようなときは小児科に相談するよう書いています。知らない人に会うたびにひどく取り乱す、親と離れるたびに強く不安がる、悲しそう・不安そうな様子が続く、といったときです。恥ずかしがりが生活に大きく響くほど強いときは、不安の病気などが隠れていないか、専門家に見てもらうと助けになるとも書いています。
子どもの人見知り・恥ずかしがりで、相談したほうがいい目安
早めに相談
- 家ではふつうに話すのに、園や学校では1か月以上ほとんど話せない
- トイレに行きたいと言えずにがまんする、園や学校で食べたり飲んだりしない
- 知らない人に会うたび、親と離れるたびに、ひどく取り乱す
- 悲しそう、不安そうな様子が続き、好きだったことも楽しめない
- ことばの遅れ、こだわりの強さなど、人見知り以外にも気になることがある
記録しながら相談を検討
- だれとなら話せるか、どこでなら話せるか
- 声以外の合図(手をふる、うなずく、指さす)は出せるか
- 慣れた相手とは、時間がたつと話せるようになるか
相談は、かかりつけの小児科、園や学校の先生、スクールカウンセラー、市区町村の子育て・発達の相談窓口や保健センターにできます。小学生なら、担任を通して、教育委員会の教育相談や、場面緘黙の子も対象になりうる「通級による指導」について聞くこともできます。相談のときは「人見知りがひどい」より、だれと、どこで、どのくらい話せるかを伝えると話が進みます。
恥ずかしがり屋の子の習い事は、好きなことから選ぶ
恥ずかしがり屋を克服させるために、人前に立つ習い事を選ぶ必要はありません。アメリカ小児科学会は、その子が夢中になれること、得意なことを生かせる活動を選ぶよう勧めています。同じものが好きという共通点が、会話や友だちづくりのきっかけになることがあるからです。
習い事を選ぶときは、次の三つを見てみてください。
- 本人が好きなこと、ずっと見ていられることか
- いきなり参加ではなく、見学から始められるか
- 少人数か、発表や順番に一人で話す場面が少ないか
最初は見学だけ、次は親のそばで少しだけ、と段階を分けると、5段階の手順と同じ考え方で慣れていけます。褒められると恥ずかしがる子への声かけは、褒められるのが苦手な子への声かけでまとめています。
子どもの人見知り・恥ずかしがり屋でよくある質問
子どもの人見知りはいつまで続きますか?
決まった終わりはありません。アメリカ小児科学会は、恥ずかしがりな子の多く、おそらく大半が、成長とともにうまく付き合えるようになると書いています。一方で、成長しても注目を浴びるのは苦手なままの子もいて、それも悪いことではありません。
人見知りは、親の育て方が原因ですか?
育て方のせいとは限りません。アメリカ小児科学会は、つらい経験から恥ずかしがりになる子もいるものの、多くは生まれつきそうだと説明しています。慣れるまでに時間がかかる気質の一つと考え、急がせずに関わります。
小学生になっても人見知りが治りません。大丈夫ですか?
慣れた相手とは話せる、声以外の合図は出せるなら、ゆっくり関わる子と見てよいことが多いでしょう。家では話すのに学校で1か月以上ほとんど話せない、トイレを言えずにがまんするなどがあれば、担任やかかりつけの小児科に相談します。
人見知りが激しいのは発達障害ですか?
人見知りの強さだけでは分かりません。場面緘黙と自閉症も見分けがつきにくいことがあり、いろいろな面から調べる必要があるとされています。家庭で決めず、だれと、どこで、どのくらい話せるかを伝えて相談します。
あいさつしないのは失礼なので、厳しく言うべきですか?
その場で迫るより、手をふる・会釈するなど、声の代わりの合図を家で決めておくほうが続きます。親が先にあいさつしてみせ、相手には「慣れるまで少し時間がかかるんです」と伝えれば十分です。
参考資料・出典
American Academy of Pediatrics / HealthyChildren.org:Understanding Your Child's Temperament: Why It's Important
公開・改訂: 2024年1月23日最終更新確認日: 2026年10月15日気質はおおむね生まれつきで、経験や人との関わりで少し変わること、慣れるまで時間がかかる慎重で恥ずかしがりな子の特徴(知らない場所や人にゆっくり慣れ、初めは一歩引き、慣れると受け入れやすくなる)American Academy of Pediatrics / HealthyChildren.org:Shyness in Children
確認日: 2026年10月15日恥ずかしがりな子の多くは生まれつきであること、最初の慣れる時期を過ぎると多くはうまく関われ、多く(おそらく大半)は成長とともにうまく付き合えるようになること、生活に大きく響くほど強いときは専門家の評価が助けになること。出典はCaring for Your School-Age Child: Ages 5 to 12(2004年)American Academy of Pediatrics / HealthyChildren.org:My daughter is extremely shy and anxious around strangers. How can I help her?
公開・改訂: 2021年11月9日最終更新確認日: 2026年10月15日親が人と関わる姿を見せる、近所の人へのあいさつや数分の遊びなど小さな一歩と事前の練習、得意なことを生かす活動、小さな一歩も認めること、知らない人や親と離れる場面でひどく取り乱す・悲しそう・不安そうなら小児科に相談することScience(PubMed):Biological bases of childhood shyness(Kagan J, Reznick JS, Snidman N)
公開・改訂: 1988年4月確認日: 2026年10月15日知らない場面でとくに慎重だった2歳児と活発だった2歳児を追った二つの縦断研究。7歳で慎重だった群の多くが知らない子どもや大人の前で口数が少なく避けがちだった。差のはっきりした子だけを選んだ研究厚生労働省(こども家庭庁「過去の保育所保育指針」に掲載):保育所保育指針(平成20年厚生労働省告示第141号・2008年版)
公開・改訂: 2008年3月28日確認日: 2026年10月15日第二章の発達過程。おおむね6か月から1歳3か月未満で、特定の大人とのやりとりが盛んになる一方で人見知りをするようになること。現行の2017年告示の指針にはこの説明がないため、2008年版を出典にしたNational Health Service:Selective mutism
確認日: 2026年10月15日場面緘黙は話すことを拒むのではなく話せない状態であること、多くは2〜4歳に始まり園や学校で気づかれること、少なくとも1か月(新しい場面では2か月)続き生活に響くなどの目安、トイレをがまんするなどの困りごと、『ただの恥ずかしがり』という意見をうのみにせず相談すること、話す圧力を取り除くこと文部科学省:障害のある子供の教育支援の手引~子供たち一人一人の教育的ニーズを踏まえた学びの充実に向けて~
公開・改訂: 2021年6月確認日: 2026年10月15日第3編の選択性かん黙(場面緘黙)の説明。特定の社会的状況で話すことが一貫してできない状態、入園・入学のころなどに始まる例が多いこと、自ら選んでいるという誤解、話させようとする働きかけが緊張と萎縮を強めうること、自閉症との判別が付けにくい場合があること、通級による指導の対象に心理的な要因による選択性かん黙等が含まれることこども家庭庁:相談窓口
確認日: 2026年10月15日自治体の子育て・発達の悩みなどの相談窓口と、関係省庁の電話・SNS相談先の一覧